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謝辞
2012年2月1日
アメリカの戦争で死亡したイラク人は100万人以上。
この一文は、アメリカ人の心性をめぐるリトマス試験紙である。「ありえない」と答える人もいる。アメリカ合衆国がそんなことをするわけがない、というのだ。そんな規模の犯罪はまだ起きていないとか、そんな規模の犯罪は起きたが、それはアメリカ合衆国がまだ救済に向かっていないからだ、とか。
100万人。「おじいちゃん、それを阻止するために何をしたの?」と問われる数字だ。アメリカ合衆国という国を否定しがたく歴史上の悪党に認定する規模である。この数字を認めたがらない、あるいは認められない人々は、100万人以上のイラク人が死亡したことを、身体的に受け付けることができない。侵入した黴菌を体が排出するように、脳がそれを除外する。
ノーム・チョムスキーはかつて次のように述べたことがある。「完全に全体主義が蔓延した文化においては、重要な真実に理解可能な意味が与えられなくなり、「くそったれ」というかたちでしか解釈されなくなります。そのため、予測されることですが、そうした真実に対しては罵倒の言葉が激流のように噴出するだけなのです」。
英国の世論調査企業であるオピニオン・リサーチ・ビジネス社(ORB)が2007年、イラクで100万人の死者が出たと発表したとき、アメリカのメディアはまさにこの言葉通りの対応を示した(実際、ORBは122万580人のイラク人が死亡したと発表した。これは、その前年にジョンズ・ホプキンス大学の研究者がそれとは別に調査して医学分野の専門誌ランセットに発表した結果と確認し更新するものだった)。
クリーブランド・プレイン・ディーラーの副編集長ケヴィン・オブライエンの例を見てみよう。彼は、ORB----顧客には英国保守党やモーガン・スタンレーなどもいる----の結論を受け取ったとき、次のように言った。「このメーリングリストから脱退させてくれ。この白々しいプロパガンダから助けてくれ!」。
* * *
トミー・フランクス将軍がかつて、民間人犠牲者について記者から問われたとき、「死者数は数えない」と述べたのは有名である。彼だけではない。
先月、イラク戦争終結についてなされた様々な暗澹たる回想の中で、イラク人犠牲者は何人だったかという数字についてはほとんど何も情報が与えられなかった。記者はイラク人犠牲者数は「不明」と述べることが多かった。山火事でどのくらいリスが死んだか調べるためにつぎ込むエネルギーと同程度しか注意を払っていないような、暗澹たる響きを持った言葉である。
ロイター通信のマリー・ミリケンが語った次のような言葉は、典型的である。「本日は、戦争で亡くなられた、イラクの人々、その数はわかりませんが、そして4500人のアメリカ人を記憶する日です」。
アメリカ人死者は何人だろう、マリー? 約4500人。それでは、イラク人は? ああ、たくさん。とっても。
「死者数不明」という表現は、いったい何人のイラク人が死亡したかについて手に入る推定が存在しないことを仄めかしている。実際には、2つ推定はあるのだ。一つはイラク・ボディ・カウント(IBC)で、メディア報道とイラク保健省の記録から、死者11万人としている。IBC自身、この数字は確実に過小推定だとしている。というのも、占領軍も、内戦当事者も、記録をきちんと残していないことはわかっているからである。とはいえ、ORBやジョンズ・ホプキンスの数値とは食い違っている。
どのような方法で犠牲者数を数えるかは別にして、イラク人死者数を述べる数値は存在する。「不明」というのは、単にケヴィン・オブライエンやマリー・ミリケンのような記者にとって、に過ぎない。
イラク人犠牲者数について沈黙が守られるのは、陰謀によるというよりもむしろ、アメリカ人の帝国主義的な心性と、犠牲者数の情報が相容れないという事実を反映している。
前の10年に起きた、ぞっとする数字を考えてみよう。ユニセフによると、1990年代、国連の経済制裁(アメリカ合衆国が押し付けた)で、医薬品をはじめとする生活必需品のイラク搬入が禁じられたため、イラク人の子ども50万人が死亡した。
2000年、国連人道援助調整官が、経済制裁に抗議して辞任した。その2年前には、前任者もやはり抗議辞任していた。ずっと外交畑で働いてきたこの2人が2人とも、のちに、アメリカ合衆国の経済制裁政策を「ジェノサイド」と呼んだ。
このことを知らなかったり、忘れていたりしたとして、それはあなただけではない。イラク戦争を計画した政治家たちも同じ。50万人の子どもを殺された親たちに、米軍兵士が解放者として歓迎されることが見込まれるなどという予測に依拠した戦争と占領政策は、それ以外にどうやって説明できるだろうか。(ちなみに、経済制裁は北部クルド人居住地域には適用されなかった。この地域でのみ、米国の占領に対する大規模なレジスタンスは起きなかった。)
最も献身的な反戦活動家の多くが、何らかの意味で革命家であることは、偶然ではない。急進的であるからこそ、どれだけ巨大な犯罪がイラクの人々に向けてなされたか、理解することができるのである。
皮肉なことに、革命家たちは、「革命家は社会を急進的に変革したがっているから、目的は手段を正当化すると考える狂信家であり、その過程でどれだけの犠牲が流れようと気にしない」奴等という、凡庸な通念に囲まれている。
しかしながら、50万人の子どもが犠牲になったことについて、「その犠牲は支払うに値した」とのたまったのは、当時の米国国務長官マドレーヌ・オルブライトだった。そして、現国防長官レオン・パネッタは、最近、第二次イラク侵略と占領について、まったく同じ言葉を繰り返したのである。
こうした狂信的な言葉に対しては、誰もが、誇りをもって全身全霊反対すべきであろう。
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